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歯科との連携で治療していく皮膚疾患

要約

最近マスメディアなどで歯科金属アレルギーなどの報道がされ、私どもの歯科医院にも歯科金属のアレル ギーを疑って来院される患者が増えている。しかし金属アレルギー以外の皮膚疾患を有する患者でも、歯性の病巣が原因だったりする皮膚疾患や、寝たきりの患者の口腔内の褥創等、歯科的な対応が可能な疾患もある。そのような観点から私どもの歯科医院が皮膚科と連携している状況を今回述べさせていただきたい

1.はじめに

最近マスメディアなどで歯科金属アレルギーなどの報道がされ、私どもの歯科医院にも歯科金属のアレルギーを疑って来院される患者が増えている。しかしこういった患者の中で特に掌蹠膿疱症(pustulosis palmoris et plantaris、以下PPP)等に罹患している患 者などは、歯科金属などのパッチテストなどを施行しても反応がなかったり、反応した金属などをアレルギーのない歯科材料に置換しても皮膚症状が改善しない症例も多数経験している。また近年、歯周病と心内膜炎、早産や低体重児出産との関係などが相次いで報告されるようになり、歯性病巣感染が改めてクローズ アップされている。

しかし、口腔内の病巣が全身的な二次病変の原因であると証明することは現在においてもきわめて困難といわざるを得ない現状であるが、PPP 等の症例で歯性病巣感染を治療していくことにより皮膚疾患も軽快・完治する症例も多数あることも事実である。歯科的な金属・歯性病巣感染といった2方向の観点で患者を診ていくことが大切である。

実際歯科医師向けに歯科金属のアレルギーなどについて述べられている成書などでも、掌蹠膿疱症の原因 としては不明な点が多いが、第一に考えるべきは、口蓋扁桃の慢性病巣感染であり、ほかに歯根・副鼻腔・ 中耳・リンパ節・虫垂・胆嚢・骨髄・卵管・前立腺・ 精嚢・などの病巣感染も関与が示唆されているが、扁 桃炎・歯周炎・J 慢性副鼻腔炎などの頭頸部の病巣感染が80〜90%を占めると記載されており、扁桃摘出術・抜歯などの処置により軽快する例が多いことが示されている。特にそういった手術後に一時的な悪化が見られる場合は、予後が良いとされている、と書かれている。

歯科金属アレルギーについては、PPP 等の場合は第2の原因として念頭に入れておくべきと考えられる。

2.歯科医師が行える対応

歯科疾患(特に歯性病巣)・金属アレルギーなどが原因かと疑って歯科医院に来院される皮膚疾患を有する患者さんに対して私ども歯科医師が行える対応として第一に行わなければならないことは、皮膚科医師・ 内科医師などとの連携である。 その後,歯科的な関与が疑われた場合には、

  1. 歯科金属アレルギーがあればその原因金属などの除去・置換
  2. 化学物質過敏症などがあれば原因となる歯科材料のその患者にとって安全な物への置換
  3. 歯性の病巣感染があるときはその病巣の除去に対しての歯科的治療
  4. 歯周疾患に対しての治療

等である。

私ども歯科医師は金属アレルギーにばかり目をとらわれるのではなく、色々な視点から皮膚科医師の方々 等と連携を行い、患者の皮膚疾患の軽減・治癒に関与 できる場合は側面からの治療支援をしていくことが、こういった疾患で悩まれている患者の希望に応えることだと思っている。

たとえば掌蹠膿疱症(PPP)などで歯科医院に来院 される患者さんの大多数は、体のどこか(主に頭頸部)に不顕性の慢性病変が見つかることが多く、その病変がたとえば口蓋扁桃であったり上顎洞炎・中耳炎 などの耳鼻科疾患であったり、私どもの歯科領域の根尖病変・歯周疾患であったりすることが多いように臨床の現場では感じている。

最近、皮膚科の医師たちも色々な皮膚疾患のうち、かなりの割合で病巣感染の関与があると考えている。その病巣が耳鼻科領域であったり、私どもの歯科領域であったりすることも多数経験されている。

そのような観点からも、皮膚科の患者に対して病巣 感染等の関与が強く疑われる場合は、私ども歯科との連携・歯科的病巣の検索等がルーチンワークになってくる。

今回筆者は、皮膚疾患で歯科が関与できる疾患は金属アレルギーだけではないこと、様々な連携の必要性があることを色々な症例を示しながら述べたいと思っている。

3.様々な皮膚疾患

1) 歯性病巣感染に関与すると思われる 皮膚疾患

歯性病巣感染に関与すると思われる皮膚疾患を挙げれば、下記の疾患が現在考えられている。

  1. 掌蹠膿疱症
  2. 浸出性紅斑
  3. 蕁麻疹
  4. 尋常性乾癬
  5. 結節性紅斑
  6. アナフィラキシー紫斑病
  7. 痒疹
  8. アトピー性皮膚炎
  9. その他

2) 歯性病巣として考えられる疾患

また、歯性病巣として考えられる疾患を分類すれば、下記のような疾患が考えられる。

  1. 口腔粘膜疾患
     慢性口腔粘膜潰瘍・カンジダ症
  2. 歯根尖部疾患
     慢性根尖性歯周炎・根尖性歯根肉芽腫・根尖性歯根嚢胞
  3. 歯周疾患
     辺縁性歯周組織炎・歯肉炎
  4. 顎骨疾患
     顎骨嚢胞・残留嚢胞・陳旧性顎骨骨折・慢性顎骨骨髄炎
  5. 歯冠周囲炎
     智歯周囲炎・萌出性歯肉炎
  6. 上顎洞炎
     歯性上顎洞炎
  7. その他

3) 最近1年間の統計データ

私どもの歯科医院に歯科疾患による皮膚疾患・金属 アレルギーを疑って来院された患者の、最近1年間の 統計的データを表1に示す。

この表からも、歯科金属アレルギーのみでなく歯性 病巣感染という観点で皮膚科医師との連携の元での歯科的関与の必要性が予測できる。またこのようにして見ていくと、ウイルス性のいぼ、虫さされの強い反応や白癬など、歯科的には対応できない皮膚疾患の患者も金属アレルギーを疑って歯科医院に来院されていることが分かる。 ただ私どもは歯科医師であり、このような皮膚科等の病名・診断は必ず専門医に依頼している。またメインの治療は必ず専門医に受診していただき、そちらでの治療・経過を診ていただきながらの歯科治療となる。

特に注意を要するのはアトピー性皮膚炎の患者である。アトピー自体は主に自己免疫疾患なので歯科的な対応は難しいと思っている。ただアトピーの患者は皮膚の感受性が高いため接触皮膚炎等を併発しているケースもある。その接触皮膚炎の原因が歯科金属アレルギーである場合は接触皮膚炎が金属の置換で良くなる場合もあり、皮膚症状が軽減(完治ではなく)する場合もある。その辺りの見極めのため専門の皮膚科医師の診断を仰ぎ、パッチテストなどの結果、歯科金属の関与が疑われた場合は金属置換も効果がある場合もある。

表1
掌蹠膿疱症[PPP] 26 口腔ヘルペス 1
接触性皮膚炎 26 酒さ様皮膚炎 1
アトピー性皮膚炎 12 掌蹠角化症の疑い 1
不明 12 尋常性ざそう 1
主婦湿疹 7 心身症 1
全身性接触性皮膚炎 6 蕁麻疹 1
結節性痒疹 5 接触性皮膚炎・掻痒性皮膚炎 1
掌蹠膿疱症の疑い 3 接触性皮膚炎の疑い 1
爪白癬 3 多発性骨髄腫・接触性皮膚炎 1
掌蹠角化症 3 爪白癬・金属アレルギー 1
口腔乾燥症 2 手湿疹 1
口腔内不定愁訴 2 手白癬 1
舌痛症 2 鼻粘膜炎症 1
接触性皮膚炎・PPP 合併型 2 慢性歯槽骨骨髄炎 1
慢性辺縁性舌炎 2 ベーチェット病・掌蹠膿疱症併発 1
角化性病変 1 膠原病の疑い 1
貨幣状湿疹 1 耳介接触性皮膚炎 1
カンジダ症 1 虫刺されの強反応 1
菌交代現象 1 類天胞症 口腔型 1
慢性湿疹 1 足底湿疹 1

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